胃がんについて

胃がんの死亡率は大幅に減少傾向にありますが、日本人にもっとも多くみられるがん(男性で最も多いがんで、女性では乳がん、大腸がんに次いで3番目に多いがん)です。新たに診断される方は年間10万人あたり約200人で、罹患率、死亡率はともに男性の方が女性よりも高いのが特徴です。年齢的にみると、50歳ごろから増加し、80歳代でピークを迎えます。
胃がんの症状
初期には自覚症状がほとんどありません。したがって、早期に発見するためには、胃内視鏡検査(胃カメラ)や上部消化管X線造影検査(バリウム検査)を受ける以外にありません。がんが進行するにつれて、胃の痛み、不快感や違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などの症状が出てきます。また、胃がんから出血することによって起こる貧血や黒い便が発見のきっかけになる場合もあります。
リスク要因
胃がんの主なリスク要因としては、ピロリ菌の感染が挙げられます(ピロリ菌感染については「慢性胃炎」の頁を参照ください)。ピロリ菌が胃に感染すると、胃粘膜が慢性の炎症が起こり、胃がんが発生しやすい状態となってしまいます。慢性胃炎が進行する前に、ピロリ菌をできるだけ早い段階で(年齢が若いうちに)除菌することで、胃がんのリスクを下げることができます。また、鳥肌胃炎や雛壁腫大型胃炎などの胃炎では、スキルス胃がんなどの原因となる未分化型腺がんのリスクとなるため注意が必要です。その他、喫煙、塩分の多い食事も胃がんのリスクとなりますので、食生活には充分注意してください。
胃がんの検査
胃がんの診断に有効な検査としては、胃内視鏡検査とX線造影検査があります。
胃内視鏡検査では、疑わしい病変があればその場で組織をつまんで(生検)、がん細胞かどうかを顕微鏡で詳しく調べる「組織検査」を行うことが出来ます。
当院では、解像度の優れた最新の内視鏡システムを用いて検査を行っております。最新の内視鏡システムを使用すれば、微小病変でも見逃す確率が低くなり、適切な早期診断・治療につながります。安心して内視鏡検査をお受けください。
胃がんの治療
早期胃がんであれば治癒率は90%を超えます。また、転移の可能性のない早期の胃がんであれば内視鏡を用いた治療が可能です。しかし、進行すると、手術や化学療法(抗がん剤治療)が必要となり、体への負担はかなり大きくなります。
胃粘膜下腫瘍について

胃粘膜下腫瘍は病変が胃粘膜の下(胃壁の中)に存在し、表面が正常な粘膜に覆われ、胃の内腔になだらかに突出している腫瘍の総称です。胃の表面に腫瘍の一部が顔をだしていることもあります。粘膜下腫瘍には、良性の病変から、治療を要する悪性の病変までさまざまなものがあります。
最も頻度の高い胃粘膜下腫瘍は、GIST(gastrointestinal stromal tumor:消化管間質腫瘍)で、その他、平滑筋腫や神経鞘腫、脂肪腫、嚢胞、迷入膵、などがあります。GISTの腫瘍細胞は、消化管の運動に関与しているカハール介在細胞を由来としており、c-kit遺伝子の突然変異によるKIT蛋白の異常により、細胞が異常増殖を起こす腫瘍です。
胃粘膜下腫瘍の症状
ほとんどの胃粘膜下腫瘍は無症状です。多くの場合、検診の消化管X線造影検査(バリウム検査)や内視鏡検査(胃カメラ)で偶然に見つかります。腫瘍が表面に顔を出している場合は、そこから出血をして、吐血、黒色便、貧血を来すことがあります。
胃粘膜下腫瘍の検査
- ・内視鏡検査(胃カメラ)
- ・超音波内視鏡検査(粘膜下腫瘍を断面図で見ることができ、発生部位やエコー像から組織像を推測することができます)
- ・CT(腫瘍内部の性状や腫瘍の拡がりを調べることができます)
- ・超音波内視鏡下穿刺生検法(組織検査)
胃粘膜下腫瘍の治療
悪性を疑う所見がない場合は内視鏡による定期的な経過観察となります。
下記のような悪性を疑わせる所見がある場合に外科的切除を行います。
- GISTの確定診断がついた場合
- 腫瘍径が2cm以上(相対的手術適応)、5cm以上(絶対的手術適応)
- 腫瘍径の急激な増大
転移があり切除不可能な場合は、グリベックやスーテントなどの分子標的治療薬の使用も検討します。